「ひゃあああ~~~~っ!!」


教室に叫び声が響きわたる。


「うるせぇ……、梨佳(リカ)」

「え?……あ、あれ、大河(タイガ)?」


どうも、うたた寝していたみたい。

机から半分ずり落ちた体を慌てて起すと、
不思議なまでの静けさに、梨佳は周りを見渡した。

入学して2週間。
名前もうろ覚えのクラスメイトが大勢固まっている。

認識できたのは、高校生になって初めてできた友達だけ。
その、山峰由紀(ヤマミネユキ)と目が合った。

瞬間、

――しまった。

と、我に返ったが、もう遅い。


「きゃぁあああ~~っ!!」


今度は、教室中どころか廊下にまで黄色い悲鳴が響き渡った。


「梨佳ちゃん!うそ!なんで?楠原先輩と知りあいだったのお!?」
「きゃぁああああ~~っ!!」
「先輩~~カッコイイ!!」


大河は梨佳のカバンを自分の肩にかけると、呆然とする梨佳を覗き込む。
教室の狂乱などお構いなしだ。


「予約に遅れるだろ。早く帰る準備しな?梨佳」

「……」


正直、その後の事はよく覚えていない。
気づいたら、
大河と二人、病院の待合室に座っていた。