神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?

*★*―――――*★*

「た、大河…、もう学校、すぐそばだし、大丈夫だよ…?」

「ダメ」


駅に着くと、大河のそばに立つ梨佳の姿を見るなり、同じ学校の生徒どころか他校の制服を着た女の子達までもが、一斉に梨佳をにらみつける。


「……大河、モテるんだね…、友達の由紀ちゃんもね、大河のこと知ってたよ」

「よくわからないけど…、梨佳こそ自分のこと、もう少し自覚したほうがいいよ」

「……何が?」


首を傾げる梨佳をみて、大河はふいに高橋の言葉を思い出す。


“梨佳ちゃん、カワイイなぁ~、心配じゃないの?お前”


「…心配に決まってんじゃん……」


大河は、ボソリ…とつぶやくと、苦笑いする。


多くの視線に晒されながら、なんとか学校に着くと、梨佳は素早く大河から離れた。

幸い学年が違うので、教室自体が別棟にある。

とりあえず、午前中は大河と顔を合わせることはないだろう。

ようやく大河から解放されたと、ホッとしたのもつかの間。

自分の席にたどり着いた瞬間、由紀が口を尖らせながら詰め寄ってきた。


「今日は、私、梨佳ちゃんに文句言うって決めてきたの」


入学式から変わっていない席順は出席番号のまま。

由紀は梨佳のちょうど前の席だ。

由紀はわざわざ椅子の向きを変えて振り返り、梨佳の机に頬杖をつくと、

じぃっ…と、梨佳の目を見据える。

そして、声を荒げて梨佳を責めた。


「ひどいっ!ひどいよ、梨佳ちゃんっ!私が大河先輩のファンだって知ってたくせに、どおして何も言ってくれなかったの?」

「…ご、ごめん…なさ…」

「なあんてね…」

「……え?」

「あはははっ!」


由紀は梨佳の困り果てた表情を見るなり、肩をすくめると、そのまま、その視線を上にずらし、教室全体を見渡した。

二人の周囲だけ、明らかに人口密度が高い。

主に女子。

しかも、今朝一緒に登校したことで、廊下には違うクラスの子も、先輩まで混ざっている。



「そう、言うつもりだったんだよ?本当は、友達って思ってたの、私だけ?みたいな、でも…ねぇ」

「…由紀ちゃん…」

「なんだか、もおいいわ…って感じ、…こりゃ大変だねぇ、梨佳ちゃん。お気の毒さま」


由紀の笑顔につられて、梨佳が力なく微笑むと、周囲の緊張も解けたのか、質問の雨が降ってきた。

昨日ひと通りの盛り上がりを見せた後の1年生の教室は、それでも比較的落ち着いているほうだろう。
梨佳の話をある程度、誤解なく聞いてくれた。


「幼なじみなんだぁ」

「昨日のアレで、付き合ってないってのはちょっと無理があるでしょー!」

「たかが幼なじみの病院についていかないよね」

「しかも、朝も一緒に登校とは」

「ヤダー!楠原先輩に彼女できちゃったぁあ~」


あくまで、ある程度。

始業のベルが鳴ると、


「はぁあああ~…」


と、梨佳は大きく深呼吸し、疲労感と安心感から机に突っ伏した。