「終わった!!帰ろうぜ!」

「あぁ。」

掃除が終わって、帰り支度をしている横で、橘はごみ袋を整理していた。

「・・・帰んないの?」

そう言う三浦に対して、友達は

「やめとけ。」

そう小声で言って、制する。
三浦の腕を掴んで、教室を出ると、また小声で話しかける。

「橘の噂、知らないのかよ。」

「噂?」

友達の話によると、こうだった。
『橘には、年上の彼氏がいて、その彼氏っていうのが、うちの高校の先輩で。
その先輩、毎日学校ある日は、橘を裏の倉庫に呼んで、そこでヤッてんだよ。
しかも、複数で。
だから、毎日ごみ捨ては、橘一人がやってんだ。』
なんとも言えない気持ちになった。
それで、橘が幸せなはずがない。
彼氏のことは好きだとしても、その他の男とヤッて幸せなわけがない。

「それ知ってて、なんで止めないんだよ。」

「なんでって・・・お前、あいつの彼氏分かってんのか?」

「誰。」

「生徒会長の根元だよ。」

初耳だった三浦は心底驚いた顔をした。
それを見た友達もまた驚いた顔をする。

「お前、まじで何も知らないのな・・・。」

「いつから?」

「あー・・・確か、付き合い始めたのは去年の今頃だったかなー・・・。」

「倉庫でヤり始めたのは?」

「あー・・・それは確か・・・半年前?
ってか、なんでそんなこと聞くんだよ。
あ・・・もしかして?」

「好きじゃねーよ。」

未だにニヤニヤしている友達を無視して歩く。
半年も、好きじゃない奴の相手をしている橘を悲しく思った。
彼氏のやっていることは、いじめではないか。
本当に橘が好きならそんなことはしないはず。
そう思うと、三浦の心が傷んだ。