「幸せだったんだな」

そう言ったモアイ像に、
「ああ、幸せだった」

宏美は言い返した。

「心美と両思いになれたことが嬉しかった。

キスはその年のクリスマスで…」

「うん、わかった。

わざわざ言わなくても大丈夫だから」

話を続けようとする宏美をさえぎるように、モアイ像は言った。

宏美は唇を閉じると、
「だから…」
と、すぐに唇を開いた。

「俺のことを忘れて、早く幸せになって欲しいと思ってる」

「うん」

「俺を忘れた方が心美にとって、1番いいんじゃないかって思ってる」

「…君は、それが本当に正しいことだと思ってるのか?」

そう聞いてきたモアイ像に、宏美は首を縦に振ってうなずいた。