始まりはそう、1年前の春。
私の名前は片岡晴佳
中学校までは地味な感じで、なにをするにも私はあまり。修学旅行の部屋決めも、席替えの時も。私の隣になった人は床のタイルひとます分開けて座っていた。いわゆる、いじめに近い感じ。それが始まったのが中学2年生くらいの時。自分を変えたい。そう思う日が続いて、やっと卒業の日。私は恋に落ちた。
あまりにも唐突すぎて自分でもその時はわからなかった。私と関わるのを嫌がるみんなと違って、その人は私に話しかけてくれた。優しい微笑みで。胸がチクッとした。そしてキュンとした。それまで恋とは無縁だった私だったけど、これがきっかけで「恋心」を知った。
「第二ボタン、いらないからあげる」
そんなに不器用に言われても、私のドキドキは止まらなかった。私も不器用にその第二ボタンを受け取る。初対面なはずなのに第二ボタンをくれた彼のことが、気になって気になって仕方がなかった。
でもその日は卒業式。声をかけてもすぐ終わる。その人の名前も知らない、進学先も知らない。もし違う高校だったら?進学しないで就職したらもう会えないかもしれない。
こんな複雑な思いを持ちながら春休みを迎えた。もちろん、彼のことも考えていた。でも私にはそれよりも大事なことがあった。
自分を変えたい。
ずっと思っていた。中学が同じ人ももちろんいる。けど、そうじゃない人の方が多いはず。高校デビューするんだ。イメチェンして、高校生活最高のものにしたい。
そう決めた私は、メークを必死に練習して、痩せて、ネットとかでいっぱい友達との話し方とか調べた。これならいける。そう思った。

高校デビューしたい。その願いは届き、1ヶ月たったいま、私は友達がたくさんできた。遊びに行ったりもした。こんなに楽しくていいの?そう思うくらいだった。
そんな私に、神様は最高すぎる贈り物をくれた。