「ね、春馬くん。ご飯作ろっか?」
「お、マジで?作ってくれんの?」
そっか。
合鍵をもらった今、今度から好きな時に来て、春馬くんのためにご飯作って待っててあげられるんだ。
冷蔵庫の中身をチェックしながら、思わず笑みを浮かべていると…
「ナツ、楽しそうだね。」
春馬くんに、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「は、春馬くん…」
「…今日、すげードキドキしたんだけど。」
「え?」
抱きしめられたまま、春馬くんがつぶやいた。
「ナツが問題解きに前出てきた時。間近で制服姿のナツ見て、俺この子と付き合ってんだ…なんて思ってた。」
嬉しい…
嬉しいけど、照れ隠しでこんなことを言ってしまう私。
「もう…先生ってば、そんなこと考えてちゃダメでしょ。」
すると、春馬くんが耳元で息を吹きかけるように呟いた。
「…瀬名が綺麗だから、見惚れたんだよ。」
私が先生って呼んだから?
春馬くんが私のことを“瀬名”って名字で呼んだ。
その低い声と、耳元での吐息に、頭がクラクラする。
「ナツ…こっち向いて……」
その声に、反射的に春馬くんの方を向く私。
春馬くんの顔が近づいてくる。
もう…
ダメ。
この気持ち、止められない。

