「お母さん、忘れ物ない?」
「今度は大丈夫!じゃ、先生。夏海をよろしくお願いします。」
「はい、任せてください。」
今度こそ準備の整ったお母さんは、たくさんの荷物を抱えて家を出て行った。
「さて…と。春馬くん、コーヒーでも入れよっか?」
「うん、ありがとう。」
賑やかなお母さんが出かけて、家の中に静寂が訪れる。
春馬くんとまったり過ごそうと、リビングでコーヒーを入れようと思った時だった。
ーーーピンポーン…
インターホンが鳴る。
「あれ?誰か来た?」
春馬くんが首をかしげる。
「お母さんかな?また何か忘れたのかなあ、まったく。」
慌てふためくお母さんを想像しながら、私は勢いよくドアをガチャンと開けた。
すると、そこには…
「な……んで……」
「約束通り、迎えに来たよ。」
あの秋山先生が、立っていた。

