「よし、わかった!お前らじゃんけんしろ!じゃんけん!」

「…まぁ、それが一番公平だな。さっさと決めろ。早く行きてェんだ。」

「土方さん。あんたは先に言ってていいですぜ」

「はいはい、総悟も挑発しないの。
はい、今井さん、総悟。じゃんけんじゃんけん」




規律委員、近藤勲と土方十四郎の言葉に
同時に拳を出した2人は、じーっと目を見つめ合ったまま
口をゆっくり開いた。




「最初はグー じゃんけんぽん」

「あいこでしょ、
あいこでしょ、あいこで……」




「…近藤さん、やっぱりじゃんけんやめたほうが良かったんじゃねェか?」

「トシもそう思う?俺も今そう思ってた」




時計をちらりと見てそう言った。
休み時間はあと10分、このじゃんけんが始まったのはそう、
今から15分前だ。

2人とも感情を読み取るのが得意な性質のせいか
じゃんけんに何を出すかというのを見破りあい
最終的にあいこが何度も何度も何度も、
終わりが見えないほどに続いているのだ。




「あああ!!!もう、じれったいわねぇ!
2人とも割り勘で!半分こにして食べなさい!」




バン、と2人の間に飛び込んできた購買のおばちゃん。
それに思わず目を見開いた2人は、ぽとりと
ドーナツの入った袋を落としてしまい、それはおばちゃんの
手の中に。それをぱかりと割られ、両方の手に置かれた。

気のいいおばちゃんだが、怒ると相当だと
聞いた2人は渋々お金を取り出した。

54円ずつ出し合うと、半分になったドーナツを
同時に口の中へ入れた。




「ったく、総悟。お前も譲るってことを知れ」


「信女さん、ドーナツを好きなのは知っていますが
ここまでとは思いませんでしたよ。」




2人を待っていた生徒会長 佐々木異三郎と規律委員副委員長の土方十四郎は
そう言うが 2人の視線がこちらに向いていないことに気付く。

2人の目線にあるのは、お互いの顔だった。

それに気付いた2人は はあぁ…と重い息をはいた。





「(次は絶対わたさない)」

「(コイツにだけは負けたくねェ)」