「-----っ、ざけんじゃねぇよ!!」

絹を裂くような声と共に響いた乾いた音に、誰も驚く事はない。

「あんた何様?たかが幼馴染の分際でちょうしのってんじゃねーよ!!」

染めた髪や、長い爪。

光に踊るブレスレット。

羽根のような睫毛。

そんな人目を引く装飾品は、例えば強さだったり気高さだったり猛々しさだったりを本来以上に周りに知らしめるのだけれど
そしてそれは確かにほぼ全ての同級生には有効に働いているのだけれど。

「聞いてんの?ねぇ!!!聞いてんのかって訊いてんだよ!!」

再度。

今度は鈍い音が響いた。

「っ……ぅ、」

その場に崩れる少女の姿は、さしずめ女王様に踏みつけられる召使いだ。

見すぼらしく、悲しい姿。

手元に雑巾とバケツでもあれば、まさしく姉達に苛められるシンデレラを連想させるだろう。

けれども短いスカートが、緩められているネクタイが、濡れたような唇が、その姿とは似つかわしく
そしてだからこそ妙に艶めかしいこともまた、事実で。

心配そうに見つめる周囲の男の瞳は、めくれたスカートから伸びる脚や、その奥へと伸びていることもまた、事実で。

その事実がまた、女王様の暴力を加速させる。

「なんとか言えよ!!!!」

地面を這うその身体を踏みつけて蹴り上げる。

見せてやればいい。

見せてやる。

その奥を。

公衆の面前で。

そのつもりで蹴り上げた。

なのに、

「-------なに、やってんの?美穂」

「、!」

「っ……」