十人の住人

22歳 5月16日⓶

ひとしきり話をして帰ろうとした時

「まだ時間ある?」

と聞かれた。
告白の話にふれられると思った私は、帰るそぶりをみせた。

「いや、その話じゃないから」

と、その友達は言った。
私はすっとぼけたように

「どの話のこと?」

と聞いた。

どの話かなんて聞かなくたってわかってるのに。
あえて言わせようとしている自分を少し嫌った。

「大丈夫だよ。
またこうして会えないかなってことだからさ」

どうしていいかわからずにいると、その空気を悟ったかのように

「そんな顔しないで」

と悲しそうな顔をした。
その顔をみつめた。
見つめ返した。

「なんで見つめるんだよ」

笑いながら言われた。

やっぱり私にはどうしていいかわからなかった。

「とりあえず、送るわ。
家まででいい?」
「いや、最寄りの駅でいいよ」

少し寂しそうな顔をしたあと

「わかった」

と、その友達は言った。