「真菜。」


考え事していたら、慎也くんに名前を呼ばれる。


「どうしたの?」
「なんかぼーっとしてたから大丈夫かなって思って。」




そんな何気ない優しさが、嬉しくて。
つい笑顔がこぼれてしまう。




「大丈夫だよ。
楽しみだなって思って。」


正式に付き合うことになってから、私の知らない慎也くんを色々知れた。


でも優しいのはあの頃と全く変わらないし、笑顔が多いのも同じ。


ただ、前よりも自然に笑うし
なによりも私の中で1番近くに感じる存在になっていた。


「そうだね。
確か旅行とか、卒業旅行以来だっけ?」


………卒業旅行。


その言葉に顔があつくなってしまう。


「………真菜?
顔赤いけど何思い出したの?」


そう言って意地悪そうに笑う慎也くんは、私を照れさせようとしてる。



絶対そうだ。



忘れるわけがないし照れるに決まってる。
私たちが初めてひとつになった日だから。


だけど慎也くんはいつだって私のペースに合わせてくれる。


だからそういう行為も今までほとんどしてないし、なにより隣に居られるだけで幸せで十分なのだ。