じっと美月さんを見れば、くすくす笑っている。


「調子はどう?」


そんな美月さんが座った状態で、壁にもたれている私の前にしゃがんだ。



………捕まったのか、と思ったけど
手も足も縛られてなく身体は自由だった。


じゃあどうしてここに………?



「びっくりした?
縛られてないの。


だって縛る必要なんてないから。」


美月さんはニコッと笑って、立ってみたら?と言われた。


不思議に思いながらも、立とうとしたその時……



「………っ。」



身体に全く、力が入らなかった。
逆に倒れこんでしまう。


どういう、こと……?



そんな私を美月さんが起こす。


「ね?びっくりしたでしょ。
なにも縛ることが全てじゃないんだよ。」


そう言って笑う美月さんは怖くて。



「なんでこんなこと………」


「私にとったら今日は大事な日なの。
海斗の族が勝つか、私の族が勝つか。


そのきっかけを真菜さんが作ってくれたんだよ、ありがとう。」


私の、族……?


「もしかして、美月さんって……」


「そうだよ。っていっても、正式には違う。
淳一の代わり。」


じゅんいち……?



「私の大事な恋人だよ。
海斗を利用しようって話してた私の恋人である総長さん。」



じゃあさっき喫茶店で話してた、総長が美月さんの本当の恋人である淳一さんという人で……


それでさっきの怒りに近い感情が戻ってくる。



「………ひどい。
それで上原を利用したなんて最低……!」


「………最低、ね。
騙された方が悪いんじゃない?」


悪びれもせず、笑いながらそう言った美月さんは悪魔にさえ見えた。