するとそんな男に……



『淳一(じゅんいち)!!』



美月は泣きながら駆け寄っていた。


その男を抱きしめながら、美月は声をあげて泣いている。


それだけで、どれほどその男が大事な存在なのかがわかった。


その濡れた瞳が俺をきつく睨んだ。


『最低……!!
なにも、こんなになるまで殴らなくてもいいじゃん……!』


泣き叫ぶように、美月は俺に向かって言った。


美月も、相手の総長も、敵も、仲間まで……


俺は壊したのかって。
現実は、そう甘いものじゃなかったんだって。



『海斗は悪くない。』
『どう考えても相手が悪いんだ。』



なのに、優斗さんや誠さん、慎也は言ったんだ。


俺が次期総長をやるべきだって。


おかしいと思った。
やれる自信がなかった。


自分で自分を制御できない人間が、1番に立つのはおかしい。



ずっと悩んでた。



自分が総長になってからも。



そんな俺に、仲間はついてきてくれるし
信じてくれた。


それもあったから、自分が優斗さんの跡を引き継ぐんだって思えた。



それから、小野田という人間に会ったせいで
俺の中で考え方も変わってきた。


美月は、好きな男のためにただ頑張っただけなんだって。


それは今回も同じで
好きな男を傷つけた俺が許せなくて


行動を起こしたんだって。


あれから、敵の総長はもう族をやめたと風の噂で聞いた。


だとしたら、美月だけがまだ残ってるってことだろ?


それは決して簡単なことじゃないってのはわかる。




だからって………


小野田を傷つけるっていうんなら話は別だ。
それは誰であっても許さねぇから。




……指定された場所に行けば、多くの敵のやつらが待ち構えていた。


奥に古びた建物があり、きっとその中に小野田と美月がいるのだろう。



すぐ、助けに行くから。




その後に、お前が言った通り話をしよう。


小野田のことだ。
だいたいどんな話かなんて想像つく。


だからもう、この感情は今日限りで終わりにして……




1人の男が俺に殴りかかる。


そこで始まった喧嘩。


もちろん俺は勝つ気でいたし、負ける気なんて一切しなかった……。