「ごめん。」
そのままの状態で、上原は謝罪の言葉を口にした。
そんな上原を見て、苦しくなって泣きたくなる。
それは上原のお母さんも同じようで、また目に涙を浮かべていた。
「……2人の大事な娘なのに、こんな危険な目にあわせて。」
……違う、違うよ上原。
そんな言葉を言ってほしいんじゃないんだよ。
謝るならもっと違うことで両親に謝ってよ………
その時。
ガタンと椅子の音を立て、上原のお父さんがようやく立ち上がった。
険しい顔で、上原に近づく。
「海斗………顔、あげろ。」
それは初めて聞く、ドスの効いた声。
聞いている私まで身体をすくんでしまう。
そして上原が顔をあげた瞬間………
鈍い、音が家に響いた。
上原のお母さんはぎゅっと明里ちゃんを抱きしめ、そのシーンを見えないようにし
「お父さん……!
やめてください!」
と叫んだ。
今、上原のお父さんが………
上原を、殴ったのだ。
上原はそうなることがわかっていたのか、表情一つ変えずお父さんをまたじっと見つめていた。
上原のお父さんは、明らかに怒っていた。
その怒りを抑えようとして、だけど抑えきれてなくて………
上原を殴った手は震えていた。