ようやく落ち着いてきた頃


2人で電車に乗る。


電車の中はむわっとしていて暑く、いつもならマフラーをとるんだけど……


今日は、とれない。
でも暑い。


「……マフラー、とらないの?」


須藤くんが私のマフラーに触れる。


慌てて私は須藤くんの手首を掴んだ。


「だ、大丈夫……!
それ以上何もしないで……!」


そんな私を見て、小さく笑う須藤くん。


本当に意地悪だ……!
これが須藤くんの本性ですか?


やっぱりSじゃん、最悪だ。
絶対遊ばれてる。



「わ、笑わないでよこの意地悪男め……!」
「うわぁ、すごい言われようだ。」



なんて言って笑う須藤くんはやっぱり余裕がある。


「俺的にはみんなに見られてほしいんだけどな。」


「な、なんで……!
絶対誤解されるよ。」


恥ずかしいし、そもそも嫌でしょ?



「そっちの方が嬉しいよ。
小野田さんはすぐ男に狙われるから。」



………ん?
私が男に狙われる?


「絶対ないでしょ。
それなら須藤くんの方が狙われてるよ、女の人に……!」


「え?じゃあ小野田さんが俺につけてくれるの?」


そう言いながら綺麗な自分の首筋を指差す須藤くん。


「絶対しません!
この変態……!」


そういうことも平気で言ってしまう須藤くんは結構重症だ。


私は慌てて須藤くんから身体ごと背けながら、早く駅に着けと心の中で願っていた。