「だって、何も知らないくせに踏み込むのは良くないでしょ?」
「……小野田さんなら、いいんだよ。」
私を抱きしめる須藤くんの声は落ち着いていて、優しくていつも通りで
でもそんな彼は何を抱えているんだろう。
それからまた、静かになったところで
声のトーンは変わらず話し始めた須藤くん。
「母さんが、亡くなる前は、
優しい両親の間に育って俺もこんな2人になれたらなって思った。
だから優しい人間であろうと思ったし、いつも笑顔の2人を真似して笑ってた。
これからもそういう人間であろうって思ったし、2人の背中を追いかけようって思ってた時に
母さんが病気になって、亡くなって。
そこから周りも自分も変わっていったんだ。」
初めて話される須藤くんの昔の話。
昔は純粋だったって言ってたのは
そんな優しい両親の間に生まれたからで
須藤くんが優しさを捨てられないのは
きっとその記憶がまだ頭に残ってるからなんだ。



