「そりゃわかるけど、なんで小野田がペンキの蓋開けようとしてんの?
お前衣装だろ?」
「そうだけど、今は劇出る人の採寸中で仕事ないから道具係の手伝いしてるの。」
「休憩すればいーのに。
ずっと働きっぱなしなんだな。」
そう言って上原はちらっと周りを見渡す。
みんな仕事を話しながらだけど、真面目に取り組んでいて思ったよりも早く終わりそうだ。
と、思っていたら……
すっ、と手が伸びてきてペンキをとられる。
「え、何して……」
と言いかけた時、上原は軽々しくペンキの蓋を開けて私に渡してきた。
「はい、どーぞ。
か弱い小野田さん?」
バカにするように笑う上原は裏が出ていた。
何よ、簡単に開けよって……!
ならもっと早くやってっての!
「ありがとう!
でももっと早くやってくれても良かったじゃん!」
開けてくれたのに、つい言い方がきつくなってしまう。
「いやー、だって話しながら必死に開けようとしてる姿、可愛かったから。」
わざとからかいにきてるつて、わかってるのに胸が高鳴る自分を恨みたい。