それは正直予想外だった。
もっと可哀想だとか、辛かっただろうとか、そんなことを言われるかと思っていたから。
しかも慰めのための嘘、とかではなく強い視線を俺に向けながら
あいつは一個一個丁寧に何故優しいと思ったのか言い始めたし。
あれには笑った。
そんな考え方をするやつもいるんだなって、ある意味小野田らしいって。
あいつは今まで見たことのないタイプだった。
他人優先だし、相手の気持ちを真っ先に考える。
それは偽善なんかじゃなくて、実際祭りの日なんか自分犠牲にして夏帆を守ろうとしたらしい。
なのに助けたら怖かったのか、泣きだすし。
その時はいつも強気な小野田がとても小さく見えた。
そんな小野田に俺はとことん振り回される。
あいつといると、気が気じゃない。
危なっかしいしすぐ人信じるし。
同時に俺とは無縁だと思っていた感情まで湧いてくるし。
あいつの人柄が、慎也までも変えようとしている。