〈上原 海斗side〉
家のドアを開ける。
どうやら今日は出かけてるのか、家に誰もいない。
その代わり、いつも俺が1人だと懐いてくる猫のモカが玄関でくつろいでいた。
俺を見て、「みゃー。」と嬉しそうに鳴く。
こいつは俺が二面性だってことをわかってんだな。
案の定、俺が部屋に行くため階段を上るとついてくる。
部屋に入って着替えて、それ以上何をする気も起きなかったからベッドに横になった。
モカも軽々しくベッドの上に乗って、俺の隣で丸まった。
そんなモカを見てると、何故か小野田の顔が頭に浮かぶ。
小野田はすぐ顔に出るし、すぐ俺に歯向かう。
犬や猫のように威嚇する時もあれば、何もせずに受け入れる時もある。
祭りの日はよほど怖かったのか、素直に俺に身を任せていた。
そんなあいつは俺のことを『優しい』と言った。