人気者の上原はいつも不機嫌





「おい、早く降りろ。
ここ、暑苦しいだろ。たばこくせぇし。」



いつも通り、低い声で私をじっと見つめてくる。



それは確かにさっきいた男ではなく……



「な、んであんたが……」



上原だった。




初めて見る、息が上がり汗が滲んでいる上原の姿。


「本当、お前トロいんだな。」
「え……きゃ……!?」


腕を掴まれ、そのまま引っ張られ無理矢理車から降ろされる。


外に出ると、男が2人うめき声を上げて地面に倒れていて………



「……おい。


お前も同じようにされたくなかったらこいつら連れてどっか行け。」



1人だけ、無傷で呆然と立っている男に上原が睨みながらそう言った。


すると男は我に返り、慌てて男2人に声をかける。


それからは一瞬で、あっという間に車に乗り込み走っていく。


「………まじで浴衣って動きにくい。
走りにくいし……って、危ねぇな。」


車の姿が遠くなり、完全に見えなくなったところで私は安心し、力が抜けてその場に崩れる。


腕を掴まれ、力を入れてくれたおかげで大胆にこけずに済んだ。


「おい、大丈夫か……?」


珍しく上原が心配そうにしゃがみ、私を見た。


本当は、怖かったよ。
強がってたけど怖かった。


まだ震えてる。


ぐっと、涙で視界が滲み、溢れそうになった瞬間………



突然何かに包まれる。



背中に手をまわされ、ぎゅっと力強く。



「泣くなよ。もう大丈夫だって。」



私を安心させるかのように上原は私の耳元で囁く。



私、今上原に抱きしめられてる………?



それは夏帆がいる上原にとって、絶対ダメなことだった。


頭では離れないといけないってわかってるのに………



動けなくて、上原に身を任せて



上原が優しくするから涙が溢れてしまった。
ただ、泣くことしかできない私。