「それで、何か用か」
床に座り込んでしまった私に向かって、エリオット王子は手をすくいあげるためか手を差し出した。
怪我をしているから、と、私はそれを丁重にお断りして、自分の力で立ち上がる。
「用……は、ないけれど……そうだ。私に何か出来ることはないかしら」
私はドレスのスカートの後ろ側の埃を手で軽く払いながら、辺りを見回す。
ヴァローナ及び他の従者が彼の身の回りの世話をしているのだから、当然私に出来ることないどない。
しかし、「あなたが心配で来ました」と正直に言うのも癪なので、それは口に出さないことにした。
「こっちへ来てくれないか」
エリオット王子は閉じていた読みかけの本をベッドのそばにある小さな棚の上に置き、再び私に向かって、怪我をしていない方の手を差し出した。
私はその手に向かって躊躇いがちに手を伸ばして、重ねた。


