「もう二度と社交ダンスなんてしないわ……!」


永遠のように感じられた時間が終わり、私は大理石の床に膝をついて息を荒らげていた。


「初めてのわりには、上手かったぞ?」


そんな私をしゃがみ込んで見下ろしているエリオット王子は至極ご満悦のようで、いつもの仏頂面から少しだけ緩んでいる。

緊張から全身に力を入れてしまっていたのか、動きを止めてかやじわじわ筋肉の疲労が襲ってくる。

私はつりそうになる足首をさすりながら顔を顰めて、汗で張り付く鬱陶しい前髪を空いた方の手の指先で弾いた。


「暑い……」


小さく呟きながら、脱げかかったヒールのない靴を履き直していると、頭上に影がかかったのがわかり、反射的に顔を上げた。


「立てるか?」

「ええ、ありがとう」


差し出された手を迷いなく受け取って、そのまま腕を引かれる。

思っていたより勢いをつけて立ち上がってしまったことにより、エリオット王子の胸に飛び込んでしまう形になった。