「ねえ、勝手にこんなことして、怒られたりしないの?」
「誰かに見られたら怒られるだろうな」
「やっぱり!」
早く戻りましょうとエリオット王子の服の裾を引くと、何を勘違いしたのか彼は優雅な動作で私の手を再び取り、身体を抱き寄せた。
「だから、二人だけの秘密だ」
「待って、私、社交ダンスなんてしたことな……きゃあっ!」
身長差から、彼が私の腰に手を当てて動き出せば、自然とつま先立ちになる。
「社交ダンスなんて、ただの遊びだ。流れに身を委ねていればいい」
オーケストラもいなければ、様式も、作法も、何もかもがめちゃくちゃであろう、私の初めての社交ダンスだった。
もたつく足がエリオット王子の足を踏みそうになる度に、苦笑いをしながら軽々と避けられた。


