「あ、ああ……」


当然ではあるが、自分で見たことはない。彼の反応から見るに、どうやら私の首の後ろにもホクロがあったらしい。

ひやりとした感覚が首の後ろに走って、彼の手が私の首筋に触れていることに気が付いた。


「触らないでちょうだい」


未婚の若い女に軽率に触れてくる男の手を払い落として、私は解いたリボンを手早く元に戻して、彼に背中を向けた。


「私はこれで失礼しますわ」


隣国の王子がなぜ、これほどまでにロゼッタに執着するのか。

答えは簡単だ。
ロゼッタとクリストフは、恋仲だったのだ。

王宮内へと続く薔薇の模様が掘られた重い扉を押し開けながら、私はこれからどうしたものか、これをどうエリオット王子に報告するかと頭を回していたのだった。