木製の何かを数度、ノックする音で目が覚めた。
いつもの、窓ガラスを棒で軽く突く音とは違う、少しだけ低い音に違和感を覚えながらも、頭から被っていた布団を剥がす。
いつも就寝時に使っている、申し訳程度の薄い掛け布団と、木製の床の感覚が直に伝わってくる、頼りない敷布団――ではなく、私の身体を反発して支える、上質なベッド。
その上で、私はぼんやりと白い天井を見上げていた。
「ロゼッタ様、起床のお時間でございます」
普段は耳にすることのない嗄れた女性の声が、昨夜の出来事が夢ではない事を示唆していた。
霧がかかったようにぼんやりしていた頭は、その言葉に一気に覚醒へと導かれる。
反射的に勢い良く上半身を起こすと、身体に掛かっていた羽毛の布団と、上衣とスカートが一体となった寝間着の膝元が捲れ上がった。
確かめるように自分の髪の毛に触れると、腰まであった髪の毛は肩口までの長さになっていた。
胸元に視線をやれば、妹が大事にしていたロケットペンダントが私の首からぶら下がり、時折朝日を反射して主張している。
間違いなく、その全てが、昨夜あの男に喧嘩を売ったあと、妹の振りをすることを了承した証だった。