「違う、君はロゼッタじゃない。生き別れの姉妹……そうは考えられないか?」
「そんなに言うのなら、私の出生記録を調べるといいわ」
「もう調べたさ。身辺情報まで、全て。出てきたのは、ローズ・スカーレットによく似た容姿の、使用人の女のことだけだった」
クリストフ・ランプリング――近隣の国の王族のことを勉強していた時に知ったことを思い出した。
彼はヴェルデ王国、国王の唯一の子息だ。
エリオットもそうだが、たった一人の跡継ぎということもあり、かなり聡明で思慮深いようだ。
引き下がる様子のないクリストフ王子に、私はため息をつきたい気持ちをグッと堪えて、付き合いきれないと言わんばかりに立ち上がり、腰に手を当てた。
「これ以上妙なことを言うのはやめてちょうだい。私には、あなたが何を言っているのかわからないわ」
「じゃあ質問を変えよう。ロゼッタはどこへ行った?」
そんなの、私が聞きたいくらいだわ。
そう思いながら、私は静かに首を横に振った。


