「君の名前は?」
「……ローズ・スカーレットよ」
一瞬名乗るのを躊躇ってから、私がそう答えると、クリストフ王子はふっと表情を消して、道端に這いつくばる芋虫を見るかのような視線を私に向けた。
胸の奥のざわつきが、次の瞬間に確信的な悪い予感へと変わったのだった。
「違う。君の本当の名前を聞いているんだ」
その言葉に一瞬時間が止まったような気がしたのは私だけで、クリストフ王子は呑気に微笑んていた。
「私は、ローズ・スカーレットよ。髪型が変わったからって、誰かと間違えているんじゃなくて?」
妹と同じように伸ばしていたいつしかの長い髪の毛の残像を辿るように肩口に手をやると、それにならうようにクリストフ王子は私の髪の毛に手を伸ばした。


