「ご挨拶が遅れました。僕はヴェルデ王国の第一王子、クリストフ・ランプリングと申します」
中性的な顔とは裏腹に、低く穏やかな声で彼はそう言った。
ヴェルデ王国、この国や周辺の国やその王族の家系について勉強している時に何度か目にした国だ。
「もしかして……エリオット王子に用がある方って、あなた?」
「いかにも」
この人が、ヴァローナの言っていた隣国の王子だろう。
ロゼッタとも面識があったのだろうか。
彼の反応を見るに、どうやら初対面のようだが、まだ油断出来ない。
「エリオット王子はまだ公務中らしくてね。それが終わるまで、僕はこの薔薇園で芸術鑑賞、というわけさ」
「そう……」
「良かったら薔薇を見ながらゆっくりお話でもどうかな?」
パンプスを持っていない方の右手をするりと取られ、滑らかな動作でガーデンテラスへとエスコートされる。
「ずいぶんと、お転婆なプリンセスなんだね?」
どこからか取り出した、白いレースのハンカチーフを長椅子に敷いたかと思えば、気が付いた時には私はそこに座らされていた。
息をつく暇もなく左手に持ったパンプスをクリストフ王子によって取り上げられ、足首を優しく掴まれた。


