「……俺が殺したとは思わないのか?」

「妹と婚約関係にあったあなたが彼女を殺せば、自分の立場が不利になる。隠そうとしたって、あなたの立場上、妬んでいる人間は多いでしょう。いずれ暴かれる事実になる」


護身用のナイフを鞘に戻して、私は外套の皺を伸ばしてしっかりと元の状態にした。薄汚れた布は、どれだけ綺麗にしてみせても、意味を成さないけれど。


「協力者がいたなら話は別でしょうけど」

「……いや、大方は君の推理通りだ」


してやられたと、男は面白くなさそうに口元を引き結んで、肩を竦めた。


「流石だな。聡明で利発的な女性だと、噂では聞いていたが」

「妹と違って、私は雑草ですから。あなたもご存知でしょう、エリオット王子」


私とロゼッタが血縁者であり双子である事実は、国王陛下と、その息子……ロゼッタの婚約者しか知らない。

またここでも綻びを見せたと嘲笑う意味でそう言ってやれば、エリオット王子は愉快そうに口元を緩めた。