冷徹王子と成り代わり花嫁契約



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「それで、あなたは誰かしら」


エリオット王子が部屋を去り、世話係にドレスを着せて貰った後、世話係と入れ替わるようにして私部屋を訪問してきたのは、見覚えのない青年だった。


「エリオット様の側近の従者でございます」


皺一つない燕尾服を身にまとったその男は、私の問いかけに表情の少しも動かさずに、淡々と答えた。

漆黒の髪の毛に、褐色の肌。
彫りの深い目鼻立ちと、鋭い光を放つ、闇夜を思わせる黒い瞳は、さながらカラスのようだった。

この国の人間は白色人種なので、この国の出身ではないのだろう。

異国の民が貴族の側近になるなんて、非常に珍しい。私は思わず目の前に佇む彼を、頭の先から爪先まで、穴が開きそうな程に眺めた。