冷徹王子と成り代わり花嫁契約


「渡してもらおう。まだ必要なんだ」

「嫌よ。見るからに悪いことに使いそうな人に、簡単に渡すと思う?」


向けられたサーベルの切っ先が、彼の持つ蝋燭の小さな光に反射して鈍く輝いている。

私は震える身体を抑え込むように、手のひらに爪が食い込むほど手を握り込んだ。

彼が僅かにサーベルを持つ手を動かしたのを見て、私は瞬時に分かれ道の右手に向かうように、地面を蹴り上げた。


「逃がすか!」


腰にくくりつけた《血印の書》を落とさないように、そこから抜き去って腕の中に抱えて、無我夢中で走った。

奥に進めば進むほど、地面がぬかるんでいて、足を取られる。

しかしそれは私の後を追うクリストフ王子も同じようで、お互いに何度ももつれそうになりながら走り続けていた。