「君、自分の立場がわかっているのか?」

「きゃあ!」


呆然と目を見開いていたクリストフ王子の表情が、だんだんと怒りのものに変わっていき、手首を掴まれ、捻り上げられた。

そのまま床に叩きつけられ、うつ伏せの状態ぇ押さえ付けられてしまった。


「君を無理矢理どうにかすることは容易いんだよ」

「っ、離して」

「どうしようか。このまま首を捻って黙らせてあげてもいいし」


床と自身の身体で下敷きにされた手を出すことができず、ろくに抵抗も出来ない私の後ろの首を掴んで、クリストフ王子はゆっくりと力を込めた。


「私を殺したら、ロゼッタのことは永遠にわからなくなるわよ……」

「ははっ。なかなかに賢いじゃないか。そうだね、僕は君を殺せない」


クリストフ王子の手が私の首から離れて、腰あたりにかかっていた重量もふっと消えた。

私は彼から逃れるように身体を起こして、這いずるように壁の方に寄った。

クリストフ王子は床に膝をついたまま私にまだ何かを言おうと口を開きかけたが、部屋の外が騒がしいことに気が付き、そちらに視線をやった。