「早く食べろ」
差し出されたスープの皿と、クリストフの顔を交互にまじまじと見て、私は重たい口を開いた。
「……何も入れてないわよね?」
彼の本当の目的がわからない以上、信用するわけにいかないそう思っての発言がますますクリストフの機嫌を損ねたらしく、彼はスプーンを手に取り、スープを口に含んだ。
毒味役を買って出たのか、と思いながらそれを眺めていると、両頬を大きな手で乱暴に掴まれて、引き寄せられた。
「んっ……!?」
状況を理解した頃には、クリストフ王子の唇と私の唇が重なっていて――頭が真っ白になった。
空いた唇の隙間から生ぬるいスープが流れ込んでくる。
「どうだ、平気だろう」
「っ、本当に、何から何まで最低ね……!」
唇が離れて、思わず口から息を吸ってしまい、むせ返った。
初めてのキスだった、なんてことは言わずに、涼しい顔をして私を見下ろすクリストフ王子を睨みつける。


