「証拠は?」
私が彼に投げかけた言葉をそのまま、クリストフ王子は嘲るような口調で吐き捨てた。
鉄格子の扉を開けて、クリストフ王子が私の方へゆっくりと歩みを進めてくる。
私は本能的に危険を察知して、冷たい石造りの床を素足で踏み、じりじりと後ずさった。
「ロゼッタの居場所を吐いてくれたら、解放してあげよう」
クリストフ王子は、知らないのだろうか。
自身が送り込んだ手下によって、ロゼッタが殺されたことを――とてもではないが、私の口からは言えない。
そんなことをすれば、用済みだとこの場で殺されかねないからだ。
「知らないわ。早くこれを外して」
心の内の恐怖や動揺を隠すようにして毅然とした態度でそう言うと、瞬きをした次の瞬間には私の身体は床に叩きつけられていた。
クリストフ王子の手には、私の手枷に繋がれた鎖が握られていて、
どうやらそれを勢いよく下に向かって引かれたことで、私は体勢を崩してしまったらしい。
「早いうちに君の気が変わることを祈るよ」
クリストフ王子はつまらなさそうな顔で鎖を床に投げ捨てて、床に落ちた南京錠を拾い上げた。
鉄格子の扉に再び鍵を掛けるクリストフ王子を、床に這いつくばったままぇ恨めしげに見つめながら、私は悔しさと、自分の浅はかさに苛立ち、唇を噛んだ。


