…い…言ってしまった……


俺は頭を抱える。


…なんで俺言ったんだよ


このままだと…ららが不登校ってことバレるよな…



…ららは俺以外に…不登校のこと知られたくねぇよな



…ということは…


「二人いつも一緒に行ってるの?!」


…この状況…


「…あれ……でも…けーちゃんほとんど遅刻してくるし…」



……やばいよな



「それに…ららちゃんと一緒にいるところ見たことない…」


…っ


「いってきますっ」


俺は、ビュンッと逃げるようにドアを開けて走り出す。


「あっ、けーちゃんっ」


何も聞こえないわー…


あー…俺と同じ名前の人がいっぱいいんだろーなーー


俺は、そっと後ろを振り返る。



「けーーちゃーーん、逃げんな待てこらーーー」


…げっ…



「…足はえーなこのオカンがっ」


俺が全力で走っても、どこまでも後を追ってくる涼太。


てゆうか、距離縮まってる気がするんですけどっ


「追いついたっ」


「うわっ」


突然ガシッと肩を掴まれ、俺はクルッと向きを変えられた。



そして涼太と目が合って、俺は諦めなのか、肩の力がふぅっと抜けるような感覚になった。



でも、今思えば俺は、


いつも涼太の前だと肩の力を抜いていられた。



なんというか…


多分、落ち着くんだろうな、と思う。



うるさいし、バカ明るいし、面倒見がいいし、優しい。


なにより、隠しごとは、決まっていつもバレてしまう。



「…はぁっ…なんで逃げんの…?」


「…っ…一緒に行けばよくない?」



涼太は、大きく息をしながら当たり前のようにそう言った。



…いや…俺はそうしたいけど…


…ららが…


聞いてからにしよう…ったって…連絡先…知らねぇんだよな…



涼太は、ららのことを傷つけたりはしない。


それは分かってる。



それでも、勝手にばらすのは違うと思うから



やっぱり…



「今は理由…言えない…」


「…けどわるい、俺、一人で行ってくる」



些細なことかもしれない。


でもきっと、ららにとっては重要なことだから



「……そっ…か」



俺のやたら真剣な瞳を見たからか、涼太は少し驚きながら俺の肩からゆっくり手を離した。



そしていつものように、涼太は無邪気にニッと笑った。



「じゃっ、先行ってるわっ」


涼太は何事もなかったかのように、俺の横をスッと通りすぎる。



「…がんばれ……」



そう、言い残して。