「……え?」
ぼーっとしていたせいで、うっすらとしか聞き取れなかった俺は、
思わずまぬけな声が出てしまう。
「……ふっ…」
……え…
さっきまでムッとしていた涼太が、柔らかい笑顔でふっと笑うから、
俺は少し驚いてから、その先の言葉を待った。
「……嘘…」
…うそ?
「なにが嘘な_」
「……がんばれ…」
涼太は俺の言葉を遮って、強く願うようにそう言うと、
また、ジャーと水道の音が静かな部屋に鳴った。
……なんだよ
…意味わかんねぇ…
…なのに…
「涼太」
…なんでそんなに、何か大事なものを手放したような目してるんだよ…
「お前、なんか俺に言いたいことあんのか…俺は何をがんばるんだよ」
俺は食器を洗っている涼太を見て、そう言った。
それでも涼太は食器を洗ったまま、こっちを見ようとはしない。
…なにそれ
「おい」
さっきまで、さんざん俺に文句言ってたくせに
自分のことになると、こうやって黙るのずるいだろ
「……涼太っていつも_」
「よしっ、洗い物終わり~~」
俺が、なにかひとつ文句をいってやろうと口を開けると、
涼太のいつもの元気な声に、遮られてしまった。
涼太っていつも…
…自分のことは俺にはあまり話してはくれないよな
あんなにいつもバカみたいに元気なのに、バカみたいに大きい声だして、
一緒に騒ぎまくってるのに、
たまにすごく遠く感じるのは、
_どうしてだろう