俺が食器を洗おうと、水道の前に立った途端、涼太にぐいっと引っ張られる。


「熱だしてる人は寝ててくださーい」


そう言って、俺がいた場所に今度は涼太が立った。



さっきもこうやって引っ張られて、結局、涼太がご飯を作ってくれた。



「…ありがとう」


俺は抵抗しても無駄だと思い、涼太の優しさに甘えることにした。



ソファーに寝転がると、スッと目を閉じる。



目を閉じると、頭に浮かんでくるのは、ららだった。



「………」


次、会ったら何言えばいいんだか…



「…けーちゃん」


名前を呼ばれ、俺は横目で涼太を見る。



「…んー?」


ザーっと洗い物の音を聞きながら、俺は、なんとなくそう返事をした。



「…好きじゃないなら、ちゃんと謝ってあげてね、きっと、ららちゃんも気にはしてると思うから」



涼太のやけに落ち着いた声に、なんだか、いつもとは違う雰囲気を感じる。



……好きじゃない…って…


「嫌いじゃないけど?」



俺がそう言うと、涼太は呆れたような声で言った。



「……そうじゃなくて…」


…そうじゃなくて…?



「…恋愛感情の方だよ」


…恋愛感情…