感情の読めない表情でそう言うと、また前を向いて歩き始める。
_それって結局
___どこに行くの?
そんな顔して、どこに行くんだよ。
俺は気がつくと、大きな声で叫んでいた。
『一緒に行こう!』
俺のその言葉は、聞こえているのか、いないのか、彼は止まってはくれない。
『何かしてくるやつがいたら、俺がボコボコにしてやるからーー!』
__ピタ…
『……そんな自信どこからくんだよ』
彼は振り向き、そう言った。
涙と笑顔で、ぐちゃぐちゃになった顔で。
俺は彼の元へ、走って行く。
『今こそティッシュが必要なときでしょ?』
彼の元へたどり着くと、俺はティッシュを差し出しながらそう言った。
『…オカン』
彼はティッシュを受けとると、無邪気に笑った。
ちゃんと、感情が分かる。
……笑ってる
気がつけば、俺もつられて笑っていた。
『名前、なんていうの?』
俺は隣を歩く彼に、そう問いかける。
『永瀬 蛍』
けい…
…じゃぁ…
『じゃぁ、けーちゃん!』
俺がそう呼ぶと、けーちゃんは俺からバッと離れる。
『は?!いきなり距離縮めてくんなっ』
『あははっ…そんな避けないでよ』
俺は笑いながら、けーちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でた。
『にゃ~』
あ!猫ちゃん!
俺は鳴き声がした方を急いで振り返る。
『……あれ…』
振り返って見渡してみても、猫ちゃんは見あたらない。
……気のせい…?
『なにしてんの?』
けーちゃんが、不安そうな顔で俺の服の袖を引っ張る。
『…猫ちゃんの鳴き声が__』
『……ううん、なんでもない』
俺は、ふっとはにかむと、また前を向いて歩き出す。
『猫の鳴き声がなんだよ?何も聞こえなかったけど』
『俺達を会わせてくれたんだよ』
『…は?何いってんだよ、オカン』
『じゃぁ、けーちゃんはガキっ』
『は?!同期だしっ…背は…今から伸びんだよっ』
『いいじゃん、ちっちゃくて可愛いよ』
猫ちゃん、ありがとね。



