しばらくついていっても、猫ちゃんは止まろうとはしない。
慌てた様子もなく、ただ俺がついてきているか確認するように、
チラチラと後ろを振り返るばかりだ。
…あれ…俺これ学校遅刻じゃね?
しかも冷静になって考えてみれば、そんなファンタジーなことがあるのかな、と思えてくる。
ただ、ご飯がほしかっただけなのだろうか。
…俺…ご飯持ってないや…
…これ以上ついていったら可哀想だよね
『ごめんね、ご飯持ってないんだ』
俺が後ろからそう声をかけると、猫ちゃんはピタリと足を止めて、こちらを振り向いた。
言葉、分かるのかな?
『にゃぁ』
俺の足にスリスリと頭をこする猫ちゃんに、俺はふふっと頬が緩む。
よく見ればこの猫ちゃん、ふくよかだなぁ…
『…可愛いね…』
『にゃぁー』
…ん?
猫ちゃんはなにやら、俺とは違う方向を見て、じっとしている。
『…あははっ…どこ見て…』
俺が猫ちゃんと同じ方向に視線を向けると、そこには小さな公園があった。
『………』
俺が途中で口ごもったのは決して、そこに公園があったからではなく、
小学校5年生くらいの男の子が、ぐったりとしてベンチに座っていたことだ。
男の子は具合が悪そうに見える。



