「はやくしてくんねぇと、遅刻なんですけど」



「…ご、ごめんなさいっ…い、行く!行きます!」


私がそう言うと、蛍くんは一瞬、真剣な表情をした。



…へ…?


「行くなら早くこい」



でもすぐいつもの表情に戻って、そう言いながら蛍くんはまた歩き始めた。


「は、はい!」


私は不思議に思いながらも、重い足を必死に動かして後を追う。



…学校についたら…


…皆に笑われないかな…



…こいつ誰だよって…言われないかな…


学校に向かっている間は、いつもこんなことをずっと考えてしまう。



頭の中に私をバカにする声や、笑い声が痛いくらいに響いてくる。



「……はぁ……はぁ…」


…あ…


…息が…しにくく……



「あ~っ、もう遅いんだよ」



「ほら、手かせ」



「…へ?」


蛍くんは私の返事を待たず、突然手を掴んで走り出した。


「わっ」



…口調はいつもめんどくさそうなのに…


…蛍くんの手は大きくて、


…すごく優しい…


こうやっていつも、手を引いてくれる蛍くんと一緒に、


私はいつか学校に行くことができるのかな…



普通の…高校生に……


「…ん、着いた」



学校の門の前に着くと、蛍くんはパッと私の手を放した。



…あ…


「……っ……」



学校の門の前に着くと、一気に頭が真っ白になるのが分かった。