蛍くんは、ゆっくりと私の腕を掴んだ。
そして、グイッと蛍くんの方に引き寄せられる。
…け、…蛍くんの顔がどんどんこっちに近づいて…
…蛍くんの呼吸が…
…綺麗な瞳が…
…前髪が顔に触れるくらい……
__近い…
「……っ…」
私の心臓はもうドキドキどころじゃありません。
…バックバクです…
私は思わず目をグッと閉じた。
「学校いかねぇとか言ったらお仕置きな」
_ドキッ
耳元で囁くような蛍くんの声は、ぞわっと全身に響いた。
…蛍くんのいつもより甘くて低い声…
「蛍くん~、らら~、朝ごはん出来たからおりてらっしゃぁ~い!」
はっ…
お母さんの呑気(のんき)な声が、シーンとした部屋に響いた。
蛍くんは私の腕をパッと離すと、
立ちあがって何事もなかったかのように部屋を出て行ってしまった。
「~~~っ……はぁぁ……」
私は全身の力が抜けたかのように、ベットに仰向けに寝転がる。
「……まだドキドキしてる…」
私は自分の心臓に手を当てて、誰もいなくなった部屋で、そう呟いた。
…やっぱり…
…蛍くんはドSです……