「俺は担任として、桜田を救ってやれなかった」
「…助けてやれなくて…わるかったな」
先生は私にゆっくりと近づくと、頭をポンッと撫でてくれた。
「母さんに謝って感謝を伝えて…」
「そんでおまえが、学校生活を一生懸命楽しめばいい」
「それがきっと…最高の恩返しになるから」
涙がぽろぽろと溢れて止まらない。
「いいなぁ、お前は愛されてんだ」
「こんなにも暖かい人たちに」
先生はそう言って、隣で眠っている蛍くんの頭もわしゃっと撫でた。
「涼太も、あいつも桜田のこと大切に思ってる」
頭にニッと無邪気に笑う涼太くんが浮かんだ。
「そんで俺も」
先生は私の髪から手を離すと、教卓の方へ歩いていった。
「担任として厳しいことは言うが、愛として受けとれよ」
教卓の中から何かを取り出した先生は、
「ほら、もう泣き止め?いなかった分の課題プレゼントしてやっから」
そう言ってイタズラに笑った。
そんな先生の笑顔につられて、私もいつの間にか笑っていた。
「…っ…はいっ…」
涙で濡れた頬を手で拭って、私は椅子から立ち上がる。



