目を閉じて音を聞いていると、カッとチョークの音が急に止まった。
…あれ
不思議に思ってゆっくりと目を開けると、なぜか眠夜先生と目があって、
ドキッと心臓が鳴った。
…わ、わたしのこと見てる…?
「桜田、」
真剣は瞳で私を見つめる先生は、静かな教室で私の名前を呼んだ。
先生の真剣な瞳から、目が離せない。
「家かえったら、母さんに謝んな」
予想もしていなかった言葉に、私は思わず目を丸くした。
「そんで、」
「ありがとうって言いな」
先生はそれだけ言うと、チョークをカタンともとの場所に置いた。
先生が言っていることは本当にすごく大切なことのような気がして、
心がぎゅっとした。
何か言わないといけないのに、なぜか声がでなくて、
制服のスカートをぎゅっと握りしめることしかできない。
先生は教卓の近くにあった椅子に座ると、私の目を真っ直ぐ見つめた。
「桜田が不登校なの、知っててずっと黙って見守ってくれてた、」
……え…
「母さんに」
窓から入ってきた風が、私の髪をゆらゆらと揺らす。
先生の言っていることが、理解できなかった、したくなかった。
だって、
……お母さんに…知られてた……?
私がずっと隠してきたことを、お母さんはずっと前から知っていたの?
「…ほんと…なんですか…?」
嘘だって言ってください。
冗談だって笑ってください。
「ほんと」



