体育は好きだ。
体動かしてるとあっという間に授業が終わるし、ずっと椅子に座ってるより全然こっちの方がいいから。
でも今日は…
「…ちゃん、けーちゃんってば!」
…あ?
「あぁ、わりぃ。なに?」
今日は、ららが気になりすぎて全然集中できねぇ
そんな俺を見て、涼太が「ふぅ」とため息をついた。
そしてキリッとした顔で、親指をある場所に向けて言った。
「…のぞきにいく?」
涼太が親指を向けている先は、体育館。
ららがいる場所。
俺がららを気にして、授業に集中できていないことを涼太はきっと気づいてる。
俺は迷いなく頷いた。
「…いく」
心配だし…
まぁ…あと単純にららが初めて体育をしてるところを見たい…つーのもあるわけで…
うん、見てぇ
もしあいつが笑って楽しんでるとしたら、その姿を見たい。
「どこに行くってー?」
うわっ
突然、そんな声と一緒に肩にまわされた腕。
……体育の先生の藤村(ふじむら)先生
耳にぶらさがってる3つのピアス。
無駄にイケメンで、ひとつに結ばれた髪は赤い。
……あいかわらず校則やぶりまくってんなぁ
俺にとって、なんとなくこの先生はきにくわない。
まぁ、別にそこまで興味ねぇんだけど
「トイレっす」
体育館の近くにトイレがある。
しかもグラウンドからは見えないところだから、これならいける。
「俺ら昼に食ったもんがダメだったみてぇで、腹痛いんです」
「な?涼太」