「はい、じゃぁ10ページ開いて」
先生のその言葉で、まだ一度も使ったことのない国語の教科書を開いた。
入学式だけちゃんと行ったから、教科書は全部持ってる。
使うことなんてないと思ってたのに…
…へへ
なんだか本当に高校生みたい。
黒ペンで教科書に名前を書いた。
それが私が学校で初めて書いた文字。
自分の名前。
クラスと、出席番号。
どれもがまだ慣れなくて、いちいちドキドキしてしまう。
……こんなに、幸せでいいのかな
「……はい、じゃぁここを今日初めて出席した桜田さん、読んでください」
「ふぇ?!」
あっ…
びっくりして変な声が出てしまった。
恥ずかしくて顔があつい。
それより私、読んでって言われましたか?!
ぼーってしてて聞いてませんでしたっ
ど、どこを読めば…
「……5行目の「私は、」から」
隣から私を助けてくれる低くて静かな声がした。
……蛍くん
助けてくれた蛍くんがかっこよくて、ついじっと見つめてしまっていた私に、「はやく読め」って口パクをされてしまった。
…あ、は、はいっ
「私は…」



