皆が口をポカーンと開けている中、後ろから「っ」と笑いを堪えるような音が聞こえて、私は後ろを振り返る。
すると、涼太くんは今にも吹き出してしまいそうな様子で肩をプルプルと震わせていた。
……必死に耐えてる…
それでも蛍くんは、そんなことを全く気にしていない様子で言葉を続けた。
「…いや、まずここ来たらおはようかなって」
…あ、あれ?
蛍くんって実は天然さんなのでは…?!
シーンとしていた教室に、ドッと笑い声が響いた。
「いや、そうだけどっ」
「あははっ、おはよう!!」
みんなが笑って、教室がさっきよりも優しい雰囲気に包まれた気がした。
……蛍くん可愛い、かっこいい
あれ…どっちだろう…
…ううん……どっちも
蛍くんは可愛いし、かっこいいです。
そんなことを考えながら蛍くんの後ろ姿を見つめていると、蛍くんがこっちを振り返った。
大好きな人のふにゃりとした笑顔は、私の心をいやしてくれる。
「…おいで」
私の耳に届いた低くて落ち着く声。
いつだって、前に進むのは怖い。
だって未来なんて見えなくて、進んだ先に何があるのか、どうしてもネガティブに考えてしまうから。
だけど、
だけどその先に蛍くんがいるなら…
私は一歩、また一歩と足を進める。
蛍くんに近づくと、みんなの視線がまた私に集まった。
一瞬立ち止まりそうになったけど、グッと力を込めて前に進んだ。
下を向いて、みんなの視線から逃げてしまいたい。
逸らしてしまいたい。
だけどそれと同じくらい…それよりも、私はここで皆と笑ったり、他愛もない話をしたい。
普通に席に座って授業がしたいです。
お昼休みにお弁当を友達と一緒に食べたりしたいです。
それから、テストを受けたい。
皆でテストの点数を見せあいっこなんて、そんな他愛もないことをしてみたいな。



