「…は、はい」
目を丸くしていたかと思えば、次は目を細めて疑うように蛍くんが言った。
「お前ほんとにららか…?」
よっぽど驚いているのか、まだ私をじーっと見つめている。
…ふふっ
「はい!ちゃんと桜田ららです!」
私が布団にくるまっている姿を、毎日見ている蛍くんだからこそ、
すごくびっくりしているんだろうな。
「…ららちゃん…ちゃんと制服着て待ってたの?えらいね~っ」
涼太くんはやっと満面の笑顔でそう言ってくれた。
頭を撫でられて、私にお兄ちゃんができたような気持ちになる。
「てっきり、俺たちが迎えに来るのを怖がってるかと思ったよ、ねっ、けーちゃ_」
_グイッ
「わっ」
「……すごいじゃん」
耳のすぐ近くで聞こえた蛍くんの声は、少し震えていた。
…抱きしめられているから、表情が見えないのが少し残念
でも…ほめてくれた…
「うへへ…ふふ」
「あ、ららちゃんが壊れた」
私にとっての一歩を、こうして心から喜んでくれる人がいる。
……私は幸せ者なんですね、きっと
ようやく蛍くんが私から離れると、ちょうどタイミングよくお母さんがキッチンから戻ってきた。
「蛍くん、涼太くん、朝ごはんまだなら一緒に食べない?」
お母さんの見透かしたような瞳に、二人はへにゃりと笑った。
「「ありがとうございます!」」