光流さんは、小さくため息をついた。
「分かってた…つもりだったんだけどな…」
「自分が安心したいからって、蛍を疑うようなこと言っちゃってたんだよね」
光流さんは、眉を下げて悲しい顔で笑った。
「…さっ、ココアでも飲む?」
光流さんが言ったそのひと言で、空気がガラッと軽くなった気がした。
「…はいっ」
光流さんは、空になった缶を持って、「よしっ、ちょっと待っててね」と言いながら立ち上がると、キッチンへと歩いていった。
俺はなんとなく空いている椅子に座って、頬杖をつく。
こうやって、明るくしようとしてくれるところ、光流さんらしいな。
「…はいっ、熱いからフーってしてね」
光流さんは、そう言って俺の前にコップを置いた。
ホカホカとゆげが出て、ココアの美味しそうな香りがする。
コップを手にとって口に近づけると、ふーっと優しく息を吹きかけた。
「いただきます」
光流さんの綺麗な瞳を見つめてそう言うと、俺の反応を楽しみにしているかのように、優しく頷いた。
最後にもう一度、ふーっと息を吹きかけてから、ココアを口へ運んだ。



