けーちゃんのママ、光流(ひかる)さんは、いつも明るくてお酒が大好き。
いい意味でサバサバしたかっこいい性格で、とっても美人な人。
肩より少し下まで伸びた、ふわっとした黒髪。
前髪は横にながして耳にかけていて、けーちゃんと同じで瞳がとても綺麗。
そんな光流さんの頬には、まだ涙が残っていた。
俺は光流さんの、頬に残った涙を見つめてから、綺麗な瞳へと視線をうつした。
そして小さく息を吸って、真っ直ぐな声で言った。
「光流さん、」
「けーちゃんは光流さんが思ってるほど、弱くないですよ」
光流さんは、目を丸くした。
どうして自分の考えていることが分かるのか、不思議に思っているような表情だった。
それでも俺は、言葉を続ける。
「だから光流さん、どうか信じてあげて」
「けーちゃんが今、どんな風に俺たちの前で笑うか、光流さんに見せてあげたいです」
「と~っても、楽しそうに笑うんです!」
光流さんが不安なのは、けーちゃんがまたいじめられたりしないか、
そしてそのことを黙っていたりするんじゃないかって、心のどこかで思っているから。
けーちゃんは…ただ不器用なだけ。
けーちゃんは口下手だから、きっと思っていることをうまく言えないんだよね。
光流さんは眉を下げ、潤んだ瞳を細めた。
「…分かった」
そして、いつもの笑顔でニッと笑ってくれた。