「…けい?」
…あ
母さんの声で、俺はハッとした。
「も~聞いてるの?」
どうやら母さんは、俺の名前を何度も呼んでいたらしい。
「…わり、ぼーっとしてた…なに?」
…フラッシュバックか…
時々こうして、あの時のことが頭の中で鮮明に再生される。
二度と思い出したくもないのに。
「高校はいい人達ばかりなんでしょ?」
「……あぁ…」
その度にイライラして、
……そんな自分が嫌になる
あのとき俺が、閉じ込められたことや、いじめられていたことを、自分の口から言わなかったせいで、
何度大丈夫だと言っても、母さんは俺を信じてくれなくなった。
「じゃぁ…なにかひどいことしてくる子とか_」
「大丈夫だっつってんだよっ」
……やべ
ドクドクと心臓の音が速い。
落ち着け…
「……ちょっと、しつけーよ」
「…あ、そうだよね…ごめん、」
「母さん、しつこいよね」
そう言って、下手くそに笑う母さんを見たかったんじゃない。
傷つけたいんじゃない。
ただ、もう俺は大丈夫だから、
大丈夫だって、安心してほしいだけなのに。
「……かいもん、してくるわ」
_ガチャンッ
なんで、言えねーんだ…
ごめんって
…なんで言えねーんだ
こんなんじゃ俺、ららに偉そうに学校に行けなんて、
本当は言っちゃいけないんじゃねーのか?



